あなたは大丈夫?お口のエイジングケア

歯科衛生士の中尾響子さんにお口のエイジングケアについてお話を伺いました。
──こんにちは!今日はオーラルケアについてお話を伺いたいと思います。早速ですが、中尾さんはどのような歯磨き剤をお使いですか?
研磨剤が入っていないものを使っています。研磨剤は歯垢や、ステインと呼ばれる茶渋などの着色、それからタバコのヤニを落とす働きがあります。でも、強力な研磨剤は歯を削ってしまう恐れがあるんです。
──そうなんですか!ちょっと怖いですね。
通常の歯磨き剤でしたら、それほど強力なものはあまりありませんので心配はいりませんが、ホワイトニング効果の高いものは注意が必要です。歯の表面にあるエナメル質を削って白くするからです。
──でも、研磨剤が入っていないと、汚れが落ちないような気がしますが。
大切なのは歯磨き剤よりは、歯の磨き方です。極端な話ですが、歯ブラシを使わずにマウスウォッシュなどの薬剤だけで、歯の汚れがバーッと落ちるなんていうことは、プロから言わせるとありえないですね(笑)。例えば、床の清掃にクリーナーなどの洗浄液だけ散布してもきれいになりませんよね。ブラシでこするから汚れが落ちるわけで。
──磨き方のコツはありますか?
歯ブラシを奥のほうまで入れて、細かくちょこちょこ動かしてあげることです。そのため、歯ブラシはヘッドが小さくて、奥歯にきちんと届くものが望ましいです。
──歯ブラシの毛の硬さも関係ありますか?
毛の硬さは「やわらかめ」か「ふつう」をおすすめします。「かため」は歯茎を傷めますし、コシが強すぎて歯のすき間の奥までブラシが届かないんです。
──そのほか、歯磨き剤を選ぶ際に気をつけることはありますか?
泡立ちが良すぎるのも問題です。泡立ちは発泡剤という成分によるもので、口の中に歯磨き剤を拡散させて、汚れの除去を促す働きがあります。でも、泡立ちが良いと磨けた気分になってしまい、しっかりブラッシングしなくなってしまうんです。
──口の中が泡でいっぱいになると、すぐに口をすすぎたくなりますね。
泡が立つことが悪いというのではないのですが、時間をかけてゆっくり磨くには不向きなんです。泡立たないジェル状のもののほうが、きちんと磨けて汚れは落ちます。ジェルはブラシの動きを助ける潤滑剤の役目もしますし、清涼感もありますのでおすすめです。
──購入するとき、参考にしたいと思います。ところで、今回のテーマはお口のエイジングケアなんですが、耳寄りな情報などありますか?
週に数回、寝たきりの方の施設を訪問して、ベッドサイドで歯を磨いてあげているんですが、虫歯予防だけではなく感染症対策にもなるんです。オーラルケアを取り入れている施設では、インフルエンザやノロウィルスの罹患率も低いんですよ。
──えっ、歯を磨くだけで?
口の中には様々な細菌がすんでいるんです。不潔にしていると、時間とともにそれらの細菌はどんどん増殖していきます。オーラルケアを行うことは虫歯や歯周病などの予防になるとともに、これらの細菌による疾病予防にもつながります。
──具体的にはどのような病気ですか?
とくに高齢者に多いのが誤嚥性肺炎という病気です。口の中に残っている食べカスや唾液が肺に入って炎症を起こすもので、オーラルケアが不十分で口の中に雑菌が多かったり、免疫力が低下していたりすると、発症リスクが高くなります。その他、血管障害や心臓病、糖尿病などを引き起こす可能性があることが、近年明らかになってきています。だからオーラルケアはとても大切だと思いますね。
──なるほど。虫歯や歯周病予防というだけでなく、オーラルケアは健康・長寿のためにとても大切なものなのですね。本日はありがとうございました。
今回のまとめ
食事中の水分摂取も大きなポイントです。唾液の多い人は虫歯になりにくいんです。唾液には自浄作用があり、プラーク(歯垢)の原因となる食べかすを流す働きがあります。唾液はサラサラ質と粘着質の2タイプありますが、お口の中に残った食べものを流すのはサラサラした唾液。40代以降は唾液が減少し、粘着質になる傾向にあるので、水分でお口を潤してサラサラの唾液を保ちましょう!