日本一の肥満県、それは沖縄。
長寿県だったはずなのに、なんだか意外な気がしませんか?
厚生労働省による平成22年国民健康・栄養調査で、沖縄県が全国で肥満率第1位という結果が出ました。
男性に関してはなんと45.2%もの人が肥満というデータですから、約2人に1人は肥満ということになります。
沖縄では10 年でおよそ40%も心臓病関連の死が増加しています。肥満だと心疾患や糖尿病のリスクも高まるためでしょう。
平均寿命も男女ともに長年トップクラスだったのにも関わらず2000年頃から大きく順位を下げ、今や男性は30位まで転落。
女性に関しては1位から3位へ落ちたものの、健康・長寿はなんとか健在しているようです。
ただし肥満率はやはり女性も全国トップです。
沖縄といったら健康・長寿のイメージだというのに、この事実との落差はいったいどういうことなのでしょうか?
食生活の変化と車社会
健康・長寿のためには、言うまでもなく生活環境や食生活が重要です。
これまで沖縄の長寿を支えてきた要因の一つは、世界でも注目される昔ながらの沖縄料理。
全国平均以上の量の緑黄色野菜、昆布など海草、豆腐を食べ、「ひづめと鳴き声以外は全部食べる」と言われる豚肉も、過不足なく摂取。脂肪の多い部位は下茹でして脂を落とすなど、こうした食習慣が栄養のバランスを保っていました。
ところが、戦後こうした食習慣に変化が起こります。
アメリカの占領下となった沖縄では、食においてもアメリカの影響を受けるようになりました。
米軍の軍用食料から供出されたポークランチョンミートやコンビーフハッシュ(コンビーフとじゃがいもを合わせたもの)など加工肉が一般に普及し、大量に消費されるようになりました。
ほかに、ビーフステーキ、ハンバーガー、ホットドッグ、ピザ、タコス(沖縄ではタコライスに発展)といったアメリカンな食べ物も日本本土よりも早い時期から普及し、1963年にはファストフードのA&Wがオープン。これは、マクドナルドの日本進出より8年早いです。
こういったアメリカ的な食文化が根付いたことは沖縄の食に大きな変化をもたらし、特に若い世代では昔ながらの沖縄料理を食べる機会は減っていきました。
戦後に生まれた現在60代以下の人たちは、子供の頃からこのような食環境でした。
沖縄県の調べでは、県民の3人に2人が脂質を過剰摂取しています。
沖縄では元気な70代以上の高齢者が多い半面、40~60代の死亡率が高いのは、こうした事情による影響が少なからずあるようです。
肥満が増えたもう一つの理由は、急速に広がった車社会の影響です。
沖縄には那覇市中心部にはモノレールがありますが、他のエリアには鉄道がありません。
そのため、移動手段は徒歩か車、バスが主流です。
時代とともに車社会が進行し、「沖縄県民はとにかく歩かない」と言われるほど車社会になりました。
現在ではおよそ人口2人に1台の割合で車を保有しており、成人のほとんどが車を持っているといっても過言ではありません。
また近年では、昔からあった八百屋さん、肉屋さんなどがどんどんなくなってしまい、新しくできた大型スーパーに車で移動して買い物をするような生活に変化してきました。
つまり、車社会の進行が運動不足に拍車をかけ、肥満率を押し上げているのです。
しかしこれは沖縄だけの問題ではありません。
車が足代わりなのは鉄道の発達した都市部以外では日常風景ですし、日本でいち早く食の欧米化が進んだのが沖縄だっただけであって、近い将来本土でも同じように肥満率や成人病が増加する可能性を秘めています。
高脂肪の欧米型の食事に運動不足。これでは肥満にならないほうが不思議です。
沖縄県では現在、長寿世界一復活に向け「チャーガンジューおきなわ」を掲げ、健康増進に取り組んでいます。
チャーガンジューとは沖縄の言葉で「いつも元気」という意味。
朝食を食べ、油は控えめに、体重を毎日測り適度な運動をしようと啓蒙しています。
自治体による啓蒙活動が奏功した長野県のように、沖縄県も長寿県として返り咲くことを期待せずにはいられません。
(参考)
厚生労働省 平成22年国民健康・栄養調査、都道府県別生命表の概況
沖縄県健康福祉部 健康おきなわ21
今回のまとめ
バランスの取れた適量の食事と、適度な運動。
美容、健康、長寿のためにはこうした基本的なことが一番大切です。
好きなものばかりを食べるような一時の楽しみよりも、長く体を快適に保つことに気を付けたいものですね。